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カッテージチーズと魅惑のクリーム“カイマック”の試作に挑戦してみた!

  • 執筆者の写真: 中央ユーラシア食の研究会
    中央ユーラシア食の研究会
  • 2021年1月4日
  • 読了時間: 6分

更新日:2021年1月6日

記事公開までお時間がかかってしまいすみません。

2020年2月9日、カッテージチーズと中央ユーラシアに存在する夢のクリーム“カイマック”、またそれらを使ったお料理の試作会をしましたのでレポートします。

試作したものは下記の7種類です。


左: カッテージチーズ

中央: 加熱式カイマック  

右: レンネットによる固化(最もプライマリーな段階のモッツァレラチーズの元)


クルトブ(下の写真中央)、スィールニキ(写真左上)、マンティ(写真右上奥)、キルギスではカッタマ、ウズベキスタンではパティルノンと呼ばれる、バターたっぷりのペイストリー(クルトブの中にちぎられてたくさん入っている!)


試作した理由


カッテージチーズを試作した理由としては、下記の3点があります。

1. ロシアから中央ユーラシアにかけての地域では乳製品、とりわけカッテージチーズを使った料理がよく見られるため。

2. 上記ばかりではなく世界の多くの地域にはいくつものカッテージチーズの種類があるが、それぞれに製法が違うため。

3. 分離させる酸の種類や温度によって、ぽろぽろになったり、なめらかになったりカッテージチーズの形状や質感に違いが見られます。その様子を確認したかったため。


クロテッドクリーム式カイマックを試作した理由としては、クロテッドクリーム≒カイマックなのかどうか?という疑問を明らかにするためです。

シルクロードを中心とした中央ユーラシア地域には、カイマックという乳脂肪分60%前後のクリームが存在します。カイマックという名前の乳製品は中央ユーラシア地域だけではなく、西アジア・東ヨーロッパ(バルカン)までの地域に存在します。しかしながら、それぞれ製造方法や形が異なります。キルギスのように生乳(搾乳後未殺菌のもの)をクリームセパレータにかけるだけの場合もあれば、生乳を長時間低温加熱した上で冷却する場合もあります。後者は、脂肪分の高い牛乳を弱火で煮詰めて、表面に固まった乳脂肪分を集めて作られるイギリスのクロテッドクリームの製法とも似ています。トルコ式カイマックも、それと同じ様にして作られるとのことです。


レンネットによる固化

カッテージチーズ、クロテッドクリーム式カイマックの固まり方との比較用です。レンネットを少量入手して牛乳に混ぜ、固まり方を観察しました。(最もプライマリーな形でのモッツァレラチーズの元)


クルトブとは、タジキスタン🇹🇯のソウルフードです。この試作会のメインディッシュとして作りました。残念ながら2020年はコロナの影響でイベント開催を断念いたしましたが、お出しする料理の一つの案として考えていました。そこでこの試作会を利用してキルギス産の乾燥乳製品クルットを味付けのベースとして利用し、ラム肉やたくさんの野菜、ペイストリーをちぎって入れ、カイマックをたっぷり使ったクルトブを作りました。


デザートとして用意したスィールニキおよびスナック(メインのおかず)として用意したマンティについては、どんなタイプのカッテージチーズがどんな料理に合うか検証したり、何種類のメニューが作れるか試す目的がありました。

ポロポロとしたカッテージチーズは、「カッテージチーズとニラのマンティ」(Манты из творога и джусая...キルギス🇰🇬料理)のフィリングとして使用し、裏ごししたカッテージチーズは、スィールニキというカッテージチーズ入りパンケーキ(ロシアのデザート🇷🇺)に使用しました。



主食としては、キルギスでカッタマ(右の写真)と呼ばれる、小麦粉を透けるくらい薄ーく広ーくのばしてたっぷりのバターを塗った上でクルクルと丸めて棒状にした上、でそれをぐるぐる巻きにして上から押し付けるようにのばした、サクサクのパイの様なペイストリーを用意し、ラズベリーのソース(Варенье из малины)とカイマックのディップをかけながらいただきました。また、焼きあがったカッタマは、細かくちぎってクルトブのメインの材料としても使用いたしました。

ちなみにカッタマはキルギス語ですが、ウズベク語ではパティルノンと呼んでいます。

乙嫁語りという漫画に登場するパリヤという少女の作るパン、といったほうがわかりやすいかもしれませんね。



試作の結果


カッテージチーズ

酸の種類としては、食酢およびポッカレモン汁の2種類を使用しました。それぞれ小さじで2杯分程度を牛乳500mlに混ぜ加熱しながら攪拌(かくはん)しました。

食酢のほうは加熱していくと50℃くらいから固まりができ始め、互いにくっつきあって次第に大きくなる感じで、60℃くらいになったところで火を止めて水切りしました。出来上がりはポロポロした感じでした。

レモン汁のほうは食酢の場合よりも細かい粒粒がゆっくりとでき始めるような感じで、こちらも70℃を超えたところで火を止めて水切りしました。出来上がりは食酢よりも細かい感じでした。

写真は左から順に、加熱中(手前の鍋が食酢入り、奥の鍋はレモン汁入り)、水切り開始時、水切り中の様子です。




クロテッドクリーム式カイマック試作

牛乳に生クリームを混ぜて脂肪分を上昇させたものを煮詰めてみたり、天板にアルミ箔を敷いて牛乳を薄く広げ、低温の60から65℃に設定したオーブンで8時間加熱してみたりしました。


オーブンで加熱したほうは、出来上がりはぱさぱさ感ご目立ち、風味も飛んでしまい、カイマックとは違うものに思えました。かき集めてお椀に入れ、冷蔵庫でさましておいたところ、固くなりスプーンを突き刺してもそのまま立つようになりました。すこしはカイマックらしくなったでしょうか。風味が感じられないのは残念です。推測ですがオーブンの中で熱風が吹き付けるため、風味成分が飛んでしまったのではないかと思われました。


写真は左から順に、煮詰めたもの、オーブンで加熱したもの、集めて冷ましておいたものです。



これら試作したカイマックは、下記の用途で使用しました。

- マンティおよびスィールニキのディップソース

- クルトブの上からかけるソースとして。熱したカイマックをたっぷりとかけました。


レンネットによる固化

沸騰してから冷ました水10g程度にレンネット0.1-0.2g 程度を溶かし、牛乳500ml をかき混ぜながら少しずつ混ぜました。

あっという間に全体が固まり始め、見た目は寒天ゼリーのようです。揺らすと容器の端のほうがぷにゅとめくれる感じなのが面白いですね。

薄黄色の水分が分離してきたので、包丁で切れ目を入れ、数時間程度様子を見てみました。


今回の試作会ではここまでで終了して試食会にて食べきってしまいました。今後の課題ですが、圧力をかけて水分を絞り出す器械や、熟成のために長時間置いておける場所があればチーズ作りにも挑戦してみたいところではあります。


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